【OC号2021】【インタビュー】考えることを楽しんで 東北大学 大野英男総長
東北大学トップの役職である、総長。第22代総長を務めるのは、大野英男氏だ。本学の「顔」とも呼べる大野総長に、話を聞いた。世界がコロナ禍にある今、全国の高校生へ、本学総長のメッセージをお届けする。(聞き手は鈴木優梨子)
―多くの高校生が大学進学を目指して勉強に励んでいる。大学とはどういう場所か
高校までは、例えば運動でいえば、基礎動作を練習することが多いですね。道具をどう使うのか、ということは高校でずいぶん教えてもらったと思います。それに対して、道具を使って何をするのかを考えるのが大学。今まで学んできたことがどのように組み合わされて、新しいことや自分のやりたいことが生まれるのか。それを発見したり、考えたり、深めたりする。そういう場所が大学です。
もう一つは、国立の研究大学としての特徴です。教育・研究の環境や体制が国の支援により充実しています。これは、東北大学で学ぶ皆さんに社会が特に期待しているからです。期待されているんだ、といつも考える必要はありませんが、恵まれた環境で学ぶ意味に思いをはせることもあってほしいと思います。自分が何をしたいかが分かってくる場所であり、そしてそれを社会が期待している。東北大学はそういう場所だと思っています。
―高校時代に身につけてほしい能力は
一つは積極性。何かをやってみたい、私はこれをやってみたい、ということを高校では追求してほしいです。受験を意識すると勉強だけに気持ちがいきがちですが、それぞれが興味のあることを追求して、ぜひ高校時代を充実したものとしてほしいと思います。
もう一つは、考えることを楽しむこと。大学に入ってからも、身に付くことが多く、また視野も広がります。日常がこのまま続くと考えていたのが、コロナ禍になって、全く違う様相になりました。社会が大変なことになりましたが、一方で、自分は何をしたいか、何をするべきか、社会がどのように動いているのかなどを深く考えるきっかけになったと思います。この機会を利用して、「考える」ということを習慣とし、楽しんでほしいと思います。皆さんはこれから大学で専門性を深めていきますが、楽しく考えることで今後の人生がさらに豊かになります。
―コロナ禍の世界をどう見るか
パンデミックが起こることを警告していた人はいましたが、社会として、それを真剣に捉えてきませんでした。全てに準備が不足していました。それでも、大学ではリモート授業など、ICT技術を活用して学びを継続しました。緊急避難的導入でしたが、これは、不可逆なステップと考えています。私たちだけがICT技術を使っているのではなく、皆さんと同世代の世界中の人たちが、ICT技術を使って授業を受けたり、人とつながったりしています。場所や時間を越えるために世界が使っていますので、習熟していなければならないコミュニケーションの道具となりました。
一方で、対面で会うことの重要さにも、改めて気づかされました。キャンパスは単に授業を受けるだけの場所ではないということです。人と人が直接会うことは何にも代えがたい重要な大学生活の一部なのです。
もう一つ言えば、今回のコロナ危機に世界は必ずしもうまく対応できたとはいえません。では、どういう国の仕組み、世界の仕組みならば、次のパンデミックや世界を揺るがす危機のときに、よい形で対応できるのか。もちろん社会課題はこれだけではありません。より良い未来をつくるには何をすれば良いか。これは、東北大学で学び成長する皆さんに、社会、世界の一員として一緒に考え、取り組んでほしいことです。
―最後に、全国の高校生に向けてエールを
東北大学は日本を代表する研究大学です。そういう意味で、最高峰だと言っていい。加えて、教育・研究の環境も大変充実をしており、学生諸君の学びをはじめとする多様な活動を支援しています。
皆さんが東北大学という場で、大きく成長し、世界で活躍することを願っています。東北大学で会いましょう。
おおの・ひでお 1954年12月18日生まれ。東京都出身。82年に東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了。北海道大学での勤務を経て、94年から本学教授を務める。本学電気通信研究所の所長などを歴任したのち、2018年より現職。専門は、半導体物理・半導体工学、スピントロニクス。
(写真は撮影時のみマスクを外しています)
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