【OC号2021】【人生の問い 大学教員が答えます】(3) 人生で大事なこと人それぞれ 医学系研究科 富田博秋 教授
誰しもが一度は考えたことがある、生や幸福についての問い。コロナ禍において大学で学ぶ学問はどう役立つのか。これらの問いに、倫理学・経済学・精神医学、それぞれの専門分野の視点から本学の教員が答えた。(全3回)
1:「生きている」とは価値に動かされること 文学研究科 村山達也 准教授
2:消費と余暇を最大化するため行動 経済学研究科 若林緑 准教授
3:人生で大事なこと人それぞれ 医学系研究科 富田博秋 教授
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―人間は何のために生きているのか、生きているとはどういうことか
患者さんを診察していて感じるのは、何を大事にして生きているかは、人によって違うということです。診察では、患者さんに「何をしている時が楽しいですか」「やりがいを感じるのはいつですか」と聞くことがあります。精神的に楽に生活できる方法を一緒に模索するのです。自分が楽しめることやわくわくすることを改めて認識し、不安なこと、嫌なことから離れてみると症状が改善することがあります。
個人的には、小説家の遠藤周作が言うように、「絶対的な真理はない」と思っていますが、自分と周りを幸せにできることを目標として生きていますね。
―幸せを感じるにはどうすればよいか
社会全体で幸せを感じる人が増えれば、自殺者は減りますよね。精神医学全体として、自殺者数を減少させるよう取り組んでいます。精神疾患がある人をサポートしたり、ハラスメントや児童虐待を無くす運動をしたりすることが必要です。
個人でできることとして「レジリエンス」という、ストレスに対処する力をつけることが挙げられます。自己肯定的な考え方をしたり、その日あったよかったことを思い返したりしましょう。心の健康を保ち、うつ病の予防につながります。
―コロナ禍で精神医学はどう役立つか
精神医学では、コロナ禍でメンタルに不安を抱えている人のサポートや治療を行っています。新型コロナはメンタルヘルスに大変悪影響を及ぼしています。感染の恐怖を感じたり、経済的に困窮して不安になったりするからです。世界全体で感染症がまん延しているため、治療に十分な医師や時間が割けないことも問題となっています。
コロナ禍において心の健康を保つためには、生活リズムを整えたり、適度に運動したりすることが大切です。オンラインで会話できるツールで少しでも人と話したり、悩みを相談したりするだけでも、精神的に安らぎを得られると思います。
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